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本博士論文では,送信者探索機能を経路制御プロトコルから排除し,経路制御
プロトコルの複雑性を回避できる「送信者指定マルチキャスト」という通信手
法を検討し,送信者指定マルチキャストを実現する受信者用プロトコル,及び
受信者上で稼働しているアプリケーションのセッション参加状態を管理する
「マルチキャスト送信者フィルター(MSF)」機能の提案と実装を行った.MSFは,
アプリケーション操作インターフェース(API),及び状態遷移機構から構成さ
れる.MSF状態遷移機構はネットワーク・インターフェース単位でのインター
フェース状態とアプリケーション単位でのソケット状態をそれぞれ独立に管理
し,受信者ホストが持つセッション参加状態を効果的に算出する.実装評価と
して,送信者指定マルチキャスト,セッション参加要求命令の反応時間が既存
の環境に適応できることを示した.
また,送信者探索機能を検討した結果,既存のSAPプロトコルには,再送遅延
や定期的なメッセージ氾濫による問題などが発見された.本博士論文では,セッ
ション情報通知に関するシステム要件を定義し,「チャネル・リフレクター」
と呼ばれる新しい分散ディレクトリ・システムの提案を行った.チャネル・リ
フレクターにおいては,セッション情報は予め構成された分散木とスコープ定
義に基づいたセッション情報通知,及び多数のインターネット上の受信者に対
するセッション情報通知を実現する.実装評価として,インターネット上に分
散したチャネル・リフレクターを用いてセッション情報の通知遅延の計測を行
い,信頼性あるセッション情報の通知を適切に行えることを確認した.
以上の研究成果を用いて,データ送信者/データ受信者/マルチキャスト・ルー
ター/チャネル・リフレクターを統合した制御可能なマルチキャスト通信アー
キテクチャを提案した.このアーキテクチャの実現により,チャネル・リフレ
クターが担うセッション広報によって決定されるデータ配信範囲をマルチキャ
スト経路プロトコルにおける経路木形成に適合させることが可能となり,送信
者と受信者を制御できるマルチキャスト通信アーキテクチャが完成された.
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
2006年度
氏名
朝枝 仁 (ASAEDA, Hitoshi)
論文題目
On Controllable Multicast Communication in the Internet
論文要旨
インターネットにおけるIPマルチキャスト・サービスの展開には,制御可能な
マルチキャスト通信の実現は不可欠である.このマルチキャスト通信アーキテ
クチャはスケーラブルなIPマルチキャスト経路制御プロトコルと共に実現され
るが,そのスケーラビリティは経路制御プロトコルが持つデータ送信者探索機
能に依存する.
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
朝枝 仁 (asaeda@wide.ad.jp )
Copyright 2000, MAUI Project
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