慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2005年度
氏名 内山 映子 (UCHIYAMA, Eiko)
論文題目 療養型ヘルスケアサービスにおける
コンシューマ中心型情報共有・保護環境の構築に関する研究
論文要旨

本研究は、医療と介護にわたる療養型ヘルスケアサービスにおいて、コンシューマが自分の希望にかなう療養生活を選択し、サービス提供者の連携による質の高いサービスを受けるために欠かせないヘルスケア情報共有の枠組みを新たな社会システムとして創出することを目的とするものである。個人のヘルスケア情報は、受療機関ごとに管理されているため、自分の情報であっても自由に利用できず、他のサービス提供者も共有し難い。本研究ではこの問題解決のため、コンシューマを自らの情報の一次所有者とする、コンシューマ中心型の情報共有モデルを提案した。さらにこのモデルに基づき、インターネット上の共有データベースとネットワーク端末で構成される情報共有システムを設計開発し、評価を行った。

 療養型ヘルスケアではサービスに関与する職種ごとに課せられた制度的制限が多様であり、コンシューマが必要とするサービスやケアに参加するメンバー構成が時間の経過とともに変化していく。これを前提とし、かつ関連法令、制度、倫理指針との整合性に配慮しつつ情報共有基盤が具備すべき条件を提案し、それらを踏まえたシステムにより、1)コンシューマが自らのヘルスケア情報を入手でき、自らの意思に従ってサービス提供者と家族等のステイクホルダにその情報を共有させる環境、コンシューマとステイクホルダ間のコミュニケーション共有環境、2)ステイクホルダ構成の変化に応じた情報共有メンバーの動的変更が可能な環境、3)コンシューマ自身が情報共有メンバーを変更でき、情報ブロックごとの詳細な情報アクセス権を設定できる機構により、コンシューマ中心の理念、安全性の確保、コンシューマによるステアリングを実現した。さらに4)従来よりも増加したコンシューマの判断責任を軽減するため、必要に応じて意思決定を家族等に委任できる「代理人」メカニズム、コンシューマの意思決定を支援するために「支援者」の概念を導入した。

 このシステムの実社会での妥当性、実現可能性、有効性を、神奈川県藤沢市在住の要介護者と家族、介護サービス提供者による2年間の実証によって検証した。その実施には医療機関・介護事業所の参加、行政、医師会等の関連機関の実施了承を得ることが必要であったが、これらの課題も産学官の協力体制により克服した。また、大学の中立な立場からの参画が、社会問題の解決に寄与し得ることを示した。

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
内山映子 (eiko@sfc.wide.ad.jp )


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