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UHF帯RFIDでは、読み取り領域にあるRF タグの目録の作成(インベントリ)を確実、高速に作成することが主要な研究課題であり、これを本研究の目的とする。本研究は、RFIDインベントリの確実化および高速化をそれぞれ実現する2つのサブテーマからなる。
"サブテーマ1: 現実的な環境下におけるRFIDアンチコリジョンのための回線品質"では、標準的なUHF帯RFIDエアプロトコルの現実的な環境下における許容回線品質とアンチコリジョン速度の関係を定量化し、その成果はUHF帯RFIDシステムの設置設計に応用できる。
UHF帯RFIDは、他のRFIDや他のワイヤレスシステムと周波数帯を共用しており、アンチコリジョン速度の深刻な低下をもたらさない干渉量の定量化は重要である。このサブテーマでは、エラー回線を考慮した現実的環境下において、符号化方式と干渉の種類を考慮し、RFID アンチコリジョンに許容できる回線品質について議論した。許容回線品質の定量化は、プロトコルシミュレーションと数学的分析だけでなく、実験的手法も用いた。これらの定量化では、フレームALOHA方式の国際的な標準プロトコルをエアプロトコルとして選択した。
本研究を行うにあたり、プロトコルシミュレータを開発した。シミュレーション結果はポアソン分布に基づく分析値と比較した。分析は、リターン(タグからリーダ) 回線とフォワード(リーダからタグ) 回線で別々に行った。プロトコルシミュレーションの結果、リターン回線、フォワード回線共に64個以下のRFタグを大幅な性能劣化を伴わずにアンチコリジョンするためにはパルスエラー率で10-4以上の回線品質を確保することが一般的に必要であると分かった。
早急な読み取りを必要としないアプリケーションを使用する場合は、リターン回線の品質は下げられる。しかし、フォワード回線の品質低下は、重要なコマンドの損失につながる恐れがある。干渉源がリーダの場合では、リターン回線では最大10dB 程度、フォワード回線では5dB 程度要求回線品質を緩和できることを実験的に測定した。
``サブテーマ2: キャプチャ効果を利用するUHF帯RFID インベントリの高速化"では、RFタグからの電波強度のばらつきを効率的に利用することでアンチコリジョンの高速化を可能とした。提案手法は、標準プロトコルを用いて実装することができるため市販リーダへ容易に適用することができる。
複数のRFタグからのアクセス要求が衝突しても電力差によりアクセスが成功することはキャプチャ効果と呼ばれており、本論文では、キャプチャ効果を有効利用する動的フレームALOHA により、UHF 帯RFID インベントリを高速化する手法を提案する。
従来キャプチャ効果を有効利用するためにはRF タグの応答に関する電波伝搬モデルの構築が必要であったが、提案手法ではフレーム内での空スロット数、成功スロット数、衝突スロット数の関係から直接キャプチャの発生確率を推定する。さらに推定したキャプチャ確率を用いて、フレーム長を最適化することによりRFID インベントリを高速化する。
プロトコルシミュレーションを用いて提案手法の推定精度と高速化効果の基本特性を明らかにした。提案手法により十分な精度でキャプチャの発生確率を推定できること、キャプチャの発生確率が高い場合に、高速化の効果が顕著であることを明らかとした。また高速化には、キャプチャ発生確率を考慮した読み残しRF タグ数の推定が大きく寄与していることも明らかとした。
実機実装を用いた評価により提案手法が代表的な既存手法と比較して安定して高速に動作することを確認した。この効果は、電波反射や吸収がある現実的な環境で顕著となり、実測では平均的には20%弱の高速化を安定的に実現できることが明らかとなった。
キーワード:
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
2007年度(2008年3月23日)
氏名
川喜田 佑介(KAWAKITA, Yuusuke)
論文題目
UHF帯RFIDインベントリの高性能化
論文要旨
連絡先
本文はこちらにあります。 (2.9Mbytes)
ダウンロードされる際は下記までご連絡ください。
川喜田 佑介 (kwkt at sfc.wide.ad.jp)
Copyright 2000, MAUI Project
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