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本論文では,NICにパケット送受信の時刻管理を持たせることにより,高精度かつ操作が柔軟なパケット処理が可能になるEtherPIPEアーキテクチャを提案する.
現在,インターネットサービスの高品質化と多様化に従って,バックボーンネットワークの広帯域化が進んでいる.サーバ間接続には,10Gbpsを超えるネットワークインタフェースカード(NIC)が広く利用されるようになった.それにより,ソフトウェアによるパケット処理を用いることで,柔軟性と高スループットを両立したネットワークのベンチマークやトラブルシュート,パケット転送,ネットワーク計測を可能になった.
しかし,ソフトウェアによるパケット処理では,専用ハードウェアのような精密なパケット処理が難しいために,未だ専用のネットワークハードウェアが多く利用されている.既存のソフトウェア処理は,OSスケジューラのタイマー精度の限界によって,パケットの送受信タイミングはマイクロ秒精度で制御されている.ハードウェアでは,ナノ秒精度でパケットの送受信タイミングが管理できるため,ソフトウェアに比べて精密なネットワーク機器検証が可能である.一方で,ネットワークハードウェアでは,ソフトウェアのような柔軟なパケット処理内容の変更が難しく,特に,現在ソフトウェアでの開発が主流であるインターネット計測のような複雑な計測シナリオの実施が難しい.現在のソフトウェアパケット処理によるタイミング精度では,今後の広帯域化進むアプリケーションの性能を制限してしまう可能性がある.
EtherPIPEは,NICハードウェアによるパケット送受信時刻管理機能,デバイスドライバ,そして,パケット処理プログラミングフレームワークで構成される.EtherPIPE NICは,ソフトウェアから制御可能な送信パケットの時刻管理機能と受信パケットのタイムスタンプ機能を,Ethernet PHYチップと同等の時間分解能で提供する.また,EtherPIPEデバイスドライバは,シリアルデバイスのようにシンプルにパケットデータを読み書きするために,汎用的なデバイスであるキャラクタデバイスとしてネットワークI/Oを抽象化する.それにより,Shell Script環境上で,既存のテキスト処理関数やOSコマンドを組み合わせることでパケット処理が可能になる.
本アーキテクチャを用いることで,専用ハードウェアと同等のナノ秒精度でのパケット処理アプリケーションを,ソフトウェアで開発可能になる.評価では,既存のソフトウェアに比べて,ネットワークテスタやミドルボックス機能を100倍以上の精度かつ,数行のネットワークスクリプティングで構築可能なことを示した.本アーキテクチャは,ソフトウェアのみの変更で高精度なネットワーク機能開発を可能にし,迅速かつ低コストでネットワーク機器評価やトラブルシューティングを行える新しいネットワーク計測基盤を提供することに貢献した.
キーワード: Software-Defined Network, NIC hardware, Network I/O, Shell scripting, インターネット計測.
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
2014年度
氏名
空閑 洋平 (KUGA, Yohei)
論文題目
Packet Scripting Architecture with Precise Packet Timing Control
(高性能パケット送受信管理に基づくネットワークスクリプティングアーキテクチャ)
論文要旨
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
空閑 洋平 ( sora at haeena.net )
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