[ English | Japanese ]
インターネット上のサービスで、実際のデータ転送の前に、デバイスの認証や課金、QoSのパラメータの交換などをするためにシグナリングプロトコルの利用が増えている。
本論文では、これらシグナリングプロトコルを用いたサービスの可用性を向上するためのアーキテクチャを提案した。本アーキテクチャを用いることにより、震災時に発生する通信規制の緩和や、今後発展が予測されているInternet of Things (IoT)サービスなどデバイスの数が飛躍的に増加するサービスにもシグナリングプロトコルを用いることが可能になる。
シグナリングプロトコルを用いサービス提供するためのアーキテクチャや運用手法について、一つのネットワークドメインにおいてさえ現在までに多数の課題が明らかになり解決されていない。まずアーキテクチャ面の課題として、サービスに対して予測できない通信が発生しても、必ず最短経路のみが利用され、また事前に登録処理したシグナリング処理サーバしか利用されず、網内の他の経路やサーバでリソースに余力があってもユーザの通信に活用されないことがある。そのため、単一の経路の帯域、または単一のサーバの処理容量を超えるトラフィックが到達した場合、現在のアーキテクチャではユーザの通信は停滞または停止する。
次に運用面の課題として、複数のサーバで複数回メッセージ交換されるため、シグナリングプロトコルを監視しメッセージロス発生箇所を短時間での特定が困難であることがある。
さらに、サービスの品質維持のため冗長方式は必須であるが、冗長方式採用のために多数のサーバが必要になりサーバ運用の負荷が上がる課題もある。
本論文では、アーキテクチャの課題を解決するために、まずサービスの可用性向上を目的にシグナリングプロトコルにより空き帯域がある経路を活用するアーキテクチャ、さらにシグナリングプロトコル自体の可用性向上のためリソースに空きがあるサーバへユーザを接続切り替えさせるアーキテクチャを提案した。経路やサーバを柔軟にネットワーク全体で利用可能にするアーキテクチャにより、突発的な通信要求に応える高信頼サービスを提供可能にした。
本論文では運用面の課題を解決するため、シグナリングメッセージの再送数という限定的な情報からロス発生個所を短時間で特定する方式と、ユーザの通信品質を落とすことなく冗長のために用意するサーバ数を削減する方式を提案した。提案方式により、トラブルシューティングに要する時間を短縮し、冗長のために用意するサーバ数を削減することで運用を効率化した。
本論文の提案に対する評価は、一つのネットワークドメインでの要求性能に対して行った。グローバルなインターネットでのシグナリングプロトコルの利用は、その規模性やそれぞれのネットワークの運用ポリシの調整機能などの検討が必要である。しかし、グローバルなインターネットは複数のネットワークドメインで形成されそれぞれ独自で管理されることから、本論文で提案、評価したアーキテクチャを応用可能である。結果として本研究はグローバルなインターネットにおけるシグナリングプロトコルを用いたサービスの可用性の向上の大きな礎になる。
キーワード: ネットワーク運用, ネットワークアーキテクチャ, シグナリングプロトコル, インターネット
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
Back to Index Page
学位取得年度
2014 年度
氏名
臼井 健 (USUI, Takeshi)
論文題目
Signaling-based Dependable Services on the Internet
(インターネット上でシグナリングプロトコルを活用した高信頼サービスの実現に関する研究)
論文要旨
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
臼井 健 ( takeshi at sfc.wide.ad.jp )
Copyright 2000, MAUI Project
Last update: