慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文

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学位取得年度 2010年度
氏名 田崎 創 (TAZAKI, Hajime)
論文題目 Floating Ground: ネットワークモビリティとアドホックネットワークを統合するアーキテクチャ (Floating Ground: An Architecture for Network Mobility and Ad Hoc Network Convergence)
論文要旨

本論文では,モバイル・アドホックネットワークとネットワーク・モビリティの統合を実現するアーキテクチャFloating Ground Architecture (FGA) を提案する.分散計算機ネットワークの能力を無駄にせず,移動を含む様々な環境においてInternet Protocol (IP) の接続性を最大化する事は重要である.災害救助活動時のネットワーク利用のような,過酷な環境においてこの目標を達成するために,ネットワークは1) 動的な規模拡張性と2) きめ細やかな接続性を提供しなくてはならない.動的なネットワーク拡張は,無線マルチホップ通信を用いたアドホックなネットワーク拡張を実現し,きめ細やかな接続性は,ノード密度の高いネットワークにおいて,高い可用性を提供する.動的な拡張は,Wi-Fi などの短距離無線メディアを通じてきめ細やかに接続性を提供しなければならないが,既存の手法はこれらの2 つの要求事項を十分に満たしていない.これはP1) 経路制御プロトコルの規模性の不十分さ,P2) ルータの入れ子構造時の冗長ルーティング,P3) 導入・展開に際する困難さに起因する.

これらの問題を解決するために,本論文ではFloating Ground と呼ばれる新たな論理レイヤを固定ネットワークと移動ネットワークの間に導入し,異なる種類のネットワークシステムを結合するFGA を設計した.この緩衝レイヤのおかげで,本アーキテクチャは1) 簡易導入と2) ルータの入れ子構造時の経路最適化を実現した.更にFloating Ground 構築のための3) ノード数に対する規模性を実現するシグナリング手法を提案し,きめ細やかな接続性を実現した.FGA の実装として,本論文では1) Extended MANEMO Tree Discovery (EMTD) と呼ばれる経路制御プロトコルを提案し,移動ルータが多い場合において規模性を確保し,Floating Ground 機能を提供する.更にFloating Ground を適用した2) NAT-MANEMO が,既存システムへの変更が最小限となるよう,冗長経路の最適化を実現する.

ソフトウェア実装による提案手法の評価を通じ,EMTD のノード数規模性を様々な環境・移動シナリオで検証した.また,NAT-MANEMO は通信性能の検証において既存手法より常に良い結果を達成し,更にハンドオーバ機能を損なわずに経路最適化を実現した.NAT-MANEMO の定性的な解析では,ネットワーク機能への変更点,標準化プロトコルへの変更点をそれぞれ既存手法と比べて低く抑え,故に他の手法と比べて簡易導入を実現する事を検証した.

本アーキテクチャは,モバイル・アドホックネットワークのような過酷なネットワーク環境下において,インターネット接続性を最大化させる事に貢献し,インターネットを人々にとっての必要不可欠なものとするための基盤を提供する事に貢献する.

キーワード: モバイル・アドホックネットワーク, MANEMO, Floating Ground, 経路制御規模性, 経路最適化, 簡易導入

連絡先 本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
田崎 創 (tazaki at sfc.wide.ad.jp)


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