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本論文では、最初に手動によるIPアドレス管理の現状を分析し、ホスト〜サブ
ネット〜組織〜国〜全世界といった階層に沿って管理が行なわれていることを
明らかにした。次に既存のIPアドレスの自動管理機構を分類し、サブネット・
組織単位での動的なIPアドレス割当や、自動アドレス付け替えなどが実現され
ていないことを示した。これらの分析からネットワークアドレスの管理には、
ホスト単位、サブネット単位、組織単位、の3レベルの管理機能を組み合わせ
る必要があることを示した。
まず第1に、ホスト単位でIPアドレスを割当・設定する機構としてIETFで標準
化されたDynamic Host Configuration Protocol (DHCP)を取り上げ、実装と評
価を行なった。フリーウェアとして公開した実装は、相互接続、大規模環境で
の運用、長期運用などを通じて検証した。第2に、サブネット単位でIPアドレ
スを自動割当し、設定するDynamic Network Configuration Protocol (DNCP)
を提案した。DNCPでは、ネットワークトポロジーによって階層内の上下関係を
決定し、それに従ってIPアドレスを管理する「階層サーバモデル」を採用した。
第3に、組織単位でのアドレス管理を実現するAAAMを提案した。AAAMはDNCPと
改善版DNCP(DNCP+)を併用することで、サブネット群のIPアドレス自動設定と
組織単位でのIPアドレス管理を同時に実現した。DNCP+はサーバの上下関係を
論理構造に基づいて設定する「階層的グループ化」を導入し、安定性とスケー
ラビリティを向上させている。AAAMは、IPアドレスの回収や自動付け替えだけ
でなく、適切なシステム運用に不可欠なAuthorizationとPolicingの機構など
も実現した。
実装はエミュレータによる仮想ネットワークと小規模な実ネットワークの双方
で動作試験を行なった。また、現実の中規模ネットワークをエミュレータ上に
再現し、手動割当よりも本システムの方がIPアドレス利用率が高くなることを
示した。ネットワークの追加や分断といった変化に対して、正常にアドレス管
理が継続されることも確認した。また、アドレスの割当・回収の所要時間を測
定し、アドレス管理が実用的な時間で機能することを示した。
これらの実験結果を総合し、ネットワークアドレスを階層的に管理する本機構
が有効であることを示した。最後に、管理アルゴリズムの妥当性、AAAMの処理
性能やスケーラビリティに関して考察し、世界規模のIPアドレス管理への適用
方法やその実現性について論じた。
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
1999年度
氏名
冨永 明宏 (TOMINAGA, Akihiro)
論文題目
ネットワークアドレスのグローバルかつ動的な割当と管理に関する研究
論文要旨
本研究では、中〜大規模なネットワークでIPアドレスの自動管理を行なう
"Automatic Address Assignment Mechanism (AAAM)"を提案・実現した。AAAM
は階層構造に基づいてIPアドレスを管理することで、高いスケーラビリティ、
管理・運用面からの正しいAuthorizationとPolicing、自律分散的な自動処理
などを可能にした。過去に類似研究はなく、本研究が初めて大規模ネットワー
クにおけるネットワークアドレスの自動管理機構の基礎を築いた。
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
冨永 明宏
tomy@wide.ad.jp
Copyright 2000, MAUI Project
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