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本論文では,インターネットを支えるドメイン間経路制御の先端的アーキテクチャを提案する.今日のインターネットでは,容易に観測可能な経路数・ドメイン数の増加傾向から,ドメイン間経路制御アーキテクチャのスケーラビリティのみが問題視されている.一方で,これらの増加が,通信サービスの品質に直結するドメイン間経路制御の安定性に与える影響については十分な議論がなく,これに付随したアーキテクチャ上の課題も明らかになっていない.
本論文では,先ず,インターネットの普及以来初の試みとして,ドメイン間経路制御の安定性を計測する手法を提案する.本手法では,経路変動に伴うトポロジの変化を解析し,経路変動の発生元を特定することで,インターネットの不安定個所を可視化する.商用ISPにおいてインターネットを監視した結果,約95%の経路障害が約20%のリンクで発生し,その約89%が末端のドメインで発生していることを明らかにした.さらに,これらの末端のドメインは,経路数の増加によって,障害復旧に多くの時間を要する,という問題点を明らかにした.
次に,上記問題を解決するためのドメイン間経路制御アーキテクチャを提案する.初めに,経路数の増加が障害時の経路切替時間を増長する課題に対し,経路表の構成とドメイン内経路制御プロトコルとの連携を最適化し,高速な経路切替を可能にする手法を提案する.プロトタイプ実装を用いて,インターネットのエミュレーション環境下で評価した結果,復旧時間を1/100以下に短縮できることを確認した.次に,災害等に伴う大規模障害により孤立したドメインの復旧時間が長期化する課題に対し,ドメイン間接続の自動化・オンデマンド化による自律的な接続性回復手法を提案する.プロトタイプ実装を用いて評価した結果,障害発生から秒オーダで復旧が可能であることを確認した.最後に,ドメイン数の増加によるインターネットの面的拡大に伴い,移動体ネットワークにおけるホームドメイン経由の通信が非効率となる課題に対し,移動体ルータ間において,動的トンネルの確立による最適経路制御手法を提案する.プロトタイプ実装を用いて,インターネットで評価した結果,通信遅延を1/100以下に短縮できることを実証した.これらの手法は,既存ルータとの互換性を保ちつつ,インターネットへの段階的な導入を可能とする.
本論文は,インターネットの安定性・可用性向上と,さらなるグローバル化に大きく寄与する.
キーワード: ドメイン間経路制御, BGP安定性,障害箇所推定,高速経路切替,オンデマンド型接続,経路最適化
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
2013年度
氏名
渡里 雅史(WATARI, Masafumi)
論文題目
Advanced Architecture for Inter-Domain Routing in the Internet
(インターネットのドメイン間経路制御のための先端的アーキテクチャ)
論文要旨
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
渡里 雅史 ( watari at sfc.wide.ad.jp )
Copyright 2000, MAUI Project
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