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本研究は、インターネット上の遠隔教育システムが、大学の社会的役割としての実務的な責任に利用可能にするために、さまざまな管理機構体系を提案し、実現したものである。
WIDEプロジェクトのSchool of Internet(SOI)は、1997年から2001年を第1フェーズとして、インターネットを基盤とした高等教育環境の構築を目指し、大学の授業を利用してインターネット上の仮想的な大学を構築した。このSOIモデルは、大学授業をインターネット上で共有するための基盤を実現し、授業のデジタル化手法と授業に伴う教員・学生間のコミュニケーション基盤を実現した。
本研究は世界に先駆けた大学授業のインターネット化を実現した第1フェーズのSOIシステムに対して、大学の実際の学事システムの一部として利用でき、かつ、汎用システムとして、他の分野のキャンパスに展開できるための管理運用機能を実現した、SOIシステムの第2フェーズの設計・実装・運用を軸として、それに伴うさまざまな制度改定の提案とその実現などの複合的なプロセスを議論し、まとめたものである。
インターネット上の授業共有・参加システムを、実務的な大学に導入・運用するには、多様で網羅的な管理機構をオンライン上で設定し確立する必要がある。当然、この管理機構は、既存の大学機構との整合性を持つ必要がある。そのためには、学生・教員・職員の個人の識別、その認証、関係の明確化とその役割の抽象化、授業の資料や映像などのデジタル化に伴う管理機構システムが必要となる。また、これらの管理機構には、入学、在学、卒業、卒業後など、それぞれの状態における、時系列での整理と管理の動的な対応が必要である。
そこで、本研究で取り組んでいるSOI第2フェーズでは、デジタル化された大学資源を、1)自律的共有管理と2)時系列の履歴管理を設計理念としたシステム設計を行った。授業の共有における著作権・個人情報の問題及び多様な共有ポリシーへの対応、大学の単位認定に必要な遠隔受講の評価と証明発行方法の確立などには、この二つの理念に基づいたシステム設計が重要となる。
問題の解決手法として、自律的共有管理と履歴管理を軸にした管理機構を共通基盤として組み込むことによるSOI第2フェーズの設計を行い、それをシステムとして実装するとともに、学習の評価認定と証明及び運用管理の仕組みの構築、講義のデジタル化手法の拡張を行った。これにより、遠隔教育基盤における大学の役割として定義した1)質の高い教育資源の豊富な提供、2)学習の評価認定と証明の発行、3)多様な学生が参加できる学習環境の提供を実現した。また、柔軟な人材確保と安定した運用を実現するためにベンチャー企業を活用しつつ、システムによるサポートとチェックの仕組みにより運用の信頼性を確保する管理機構の確立を行った。
本研究では、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)を実際の教員・学生・大学職員・外部受講者らが参加する「実験キャンパス」と捉え、2002年のSFC Global Campus(SFC-GC)導入から、SFCにおける遠隔教育システムとその管理機構の運用を実践し、その有効性を社会に実証してきた。慶應義塾大学SFC Global Campus(2002〜2007年・334授業4195講義)、慶應義塾大学政策・メディア研究科e-科目等履修生制度(2005〜2007年・14授業)、慶應義塾大学通信教育課程e-Schooling(2006〜2007年・3授業)の運用により、本研究で提案する遠隔教育システムとその管理機構が、大学の果たすべき役割を実現し、且つ信頼可能な運用が可能であることを証明した。
本研究の成果として、大学授業を用いた遠隔授業による学習機会の拡大と大学の正式単位の取得を実現するとともに、ダブルディグリープログラムや単位互換制度への導入による大学間協調及び通信教育における柔軟な学習環境の実現に貢献した。
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
MAUI Project
博士論文
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学位取得年度
2007年度 (2008年2月27日)
氏名
村上 陽子 (MURAKAMI, Yoko)
論文題目
次世代高等教育基盤としての遠隔教育システムとその管理機構に関する研究
論文要旨
連絡先
本文が必要な場合は下記までご連絡ください。
村上 陽子 ( yoko at sfc.wide.ad.jp )
Copyright 2000, MAUI Project
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